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みちくさラジオ 紫陽花 その2

豊穣の女神
「みちくさラジオの時間じゃよ~!」
リサ
「じゃよ~!」
レスト
「じゃよじゃよー」
豊穣の女神
「先日に引き続き、第3回も
紫陽花の話をしていくのじゃ!」
リサ
「紫陽花は宇宙パワーなんだよね!
…じつは、宇宙よりさらにすごい秘密が?」
豊穣の女神
「まだ秘密が隠されていたのかえ!?」
レスト
「やめて、あんまりハードル上げないで…!」
豊穣の女神
「勇者なら上げられたハードルを越えてみよ」
リサ
「レストお兄さんはニセモノ勇者だよ」
豊穣の女神
「じゃあ越えられなくても仕方ないのぅ」
レスト
「なんかそれはそれでムカつくな」
リサ
「リサ、前のみちくさラジオのあと
紫陽花を見に行ったよ。まんまるなのと、
カッパさんみたいなお花があった!」
豊穣の女神
「カッパというのは、ガクアジサイのことかのぅ?
たしかに真ん中がカッパのお皿みたいじゃな」
レスト
「ここに載せている写真の
紫陽花がガクアジサイだね」
レスト
「ガクアジサイ、
どうしてハゲちゃったの?」
レスト
「あれはハゲたわけでは…。
この周りの花、じつは花びらじゃないんだよ」
リサ
「ええっ!?
花びらじゃないの!?」
豊穣の女神
「じゃあ、本当の花はどこじゃ?」
レスト
「本当の花は、まんなかに集まっている
リサちゃんがハゲ扱いしたやつだね」
リサ
「ハゲじゃなくてお花だった…!?」
レスト
「紫陽花も花をハゲ扱いされて
きっと泣いてるよ。しくしく」
リサ
「花じゃなくて
レストお兄さんが泣いてる」
豊穣の女神
「しかし、どうしてそんな
まぎらわしいことに?」
レスト
「それはね、虫さんを呼ぶための作戦なんだ」
リサ
「作戦?
戦いみたい!」
レスト
「花びらに見えるのは飾りで、
本当の花を守る『がく』という部分が
変化したんだよ」
豊穣の女神
「へぇー、紫陽花も飾りをつけて
オシャレしておるのじゃのぅ」
レスト
「虫さんたちに『こっちに美味しい蜜があるよ!』って、
遠くからでもわかるようにアピールしているんだね」
リサ
「そっか! 虫さんたちを呼ぶために
いっぱいオシャレをがんばってたんだ!」
豊穣の女神
「健気でかわいいやつよのぅ。
しかし、それなら丸い紫陽花のほうは
どうなるのかえ?」
リサ
「飾りが本当のお花になったの?」
レスト
「丸い紫陽花はすべて飾りで、
虫さんが来ても蜜がないんだよ」
リサ
「えっ、そしたら虫さん帰っちゃう!」
レスト
「そうだね。だからガクアジサイのように
種で増えることがほとんどできなくて、
挿し木をするんだ」
豊穣の女神
「オシャレは我慢とは言うが、
種まで無くしてしまうとは
ちょっとがんばりすぎじゃのぅ」
レスト
「ほんとだね。
でも紫陽花にもいろんな人生…、
いや、花生があったんだよ」
リサ
「涙なしには見れない
アジサイ花生劇場がはじまる…!?」
レスト
「紫陽花のはじまりはコアジサイっていう
日本の山に咲いてる小さな花でね。
飾り気ない、地味でおとなしい子だった…」
豊穣の女神
「おっ、コアジサイなら知っておるぞい。
ここからガクアジサイになったんじゃよな?」
リサ
「虫さんに見つけてもらいやすいように
オシャレするようになったんだね!」
レスト
「そしてそれをおうちで育ててるうちに、
全部が飾りになったのが丸いホンアジサイ」
豊穣の女神
「あの素朴だった子が
すっかり別の姿になってしもうて…」
レスト
「さらに、それがヨーロッパに渡って、
もっと派手に改良されて帰ってきたのが
セイヨウアジサイなんだよ」
リサ
「完全に都会に染まっちゃったか…!
ピュアだった頃のあの子はもういないんだ…」
豊穣の女神
「リサちゃん、
そんな言葉どこで知ったんじゃ?」
レスト
「山奥で静かに暮らしていたら
スカウトされて世界で売れた件」
豊穣の女神
「物語の名前まで決めるでない」
リサ
「でもリサはオシャレより強さのほうが
好きだから、ガクアジサイ派かもしれないな…」
豊穣の女神
「ハゲって言っておったのに?」
リサ
「ハゲはハゲでも、
つよくてかっこいいハゲだから!
虫さんを呼んで種を作れるもん!」
レスト
「…あの、ハゲ呼びやめてあげて?
まんなかの花もじっくりよく見たら
かわいいいから、ね?」
豊穣の女神
「そうじゃぞ。
ちっちゃい金平糖みたいなお花が
あつまって、愛らしいものじゃ」
リサ
「ほんとうだ! 地味だけどかわいい!
オシャレすることでモテるようになる
ヒロインタイプのお花だ!」
レスト
「がんばりやさんの花で
ヒロインにピッタリだね」
豊穣の女神
「しかし、オシャレは人を変えてくれるが、
やりすぎると身を削って苦しくなる…。
それを紫陽花は教えてくれるのぅ」
レスト
「そうか…?」
リサ
「でも、やっぱりまんまる紫陽花も好き。
ガクアジサイと仲良くなってほしい」
レスト
「もともと喧嘩してないよ!?」
豊穣の女神
「大丈夫じゃよ、きっと2人は
オシャレ友だちとして仲良くなれる」
リサ
「オシャレで戦って、
オシャレで仲良くなる…。
アジサイは魔法少女なんだね!?」
豊穣の女神
「そうじゃよ」
レスト
「そうなの!?」
リサ
「必殺技は宇宙パワー!」
レスト
「宇宙パワー設定
そこに繋がるんだ!?」
リサ
「リサも勇者として、紫陽花みたいに
がんばっていきたいな」
豊穣の女神
「うむ、うむ!
なんだか紫陽花って憧れるのぅ」
レスト
「と、とりあえず、紫陽花を
もっと好きになってもらえたなら
レストお兄さんもうれしいな」
リサ
「紫陽花のこと、いろいろ
知れてとっても楽しかった!
レストお兄さんありがとう!」
豊穣の女神
「じつに良い働きであったぞ!
褒美に野草ポイント10を与えよう」
レスト
「ははーっ!
ありがたきしあわせ!」
リサ
「あはは、時代劇みたーい!
よきにはからえ~!」

【参考文献】
・稲垣 栄洋 著『身近な花の知られざる生態』PHP研究所(2015)
・稲垣 栄洋 監修『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』日本文芸社(2019)
・山田 隆彦 著『自然散策が楽しくなる! 花図鑑』 PHP研究所(2022)